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制作会社や個人から直接依頼を受けるようになると、必ずぶつかるのが見積もりです。「いくらで出せばいいのか分からない」という理由で、直接取引を避けている人も多いと思います。
私はWeb制作に14年関わり、制作会社への直接営業で月に数件(1件あたり数万円)の案件を受けてきました。要件定義からリリースまで一貫して担当する案件も経験しています。
この記事では、コーダーが案件単位で見積もりを作るときの考え方を書きます。エージェント経由の月額単価についてはコーダーの単価相場にまとめました。
結論:金額ではなく「時間」から逆算する
見積もりで失敗する人は、いきなり金額を考えます。正しい順番はこうです。
- 作業を分解する
- それぞれに何時間かかるか出す
- 自分の時給をかける
- そこに不確実性の分を足す
「1ページいくら」で決めると、必ずどこかで破綻します。同じ1ページでも、要素の量と修正回数でかかる時間は倍以上変わるからです。
まず自分の時給を決める
基準になる数字を持つ
時給が決まっていないと、見積もりは作れません。基準の作り方は簡単です。
エージェント経由で提示される月額単価を、稼働時間で割ります。私が7社の面談で提示されたのはどこも月50万円台で、月140〜160時間で計算すると時給3,400円前後になります。
この数字を持っていると、案件単位の見積もりでもブレなくなります。「この金額だと時給いくらか」を常に確認できるからです。
安い時給で受け続けた失敗
私は条件の悪い案件を受けていた時期、月140時間動いて10万円でした。時給に直すと714円です。当時は「安い」と気づいていませんでした。
基準を持たないまま見積もると、こうなります。先に自分の時給を決めてください。
作業を分解する
コーディング案件で、実際に時間がかかるのはコードを書く作業だけではありません。見落としやすいものを含めて分解します。
必ず入れる項目
- デザインの確認と質問出し(着手前の読み込み)
- コーディング本体(PC・スマホ両方)
- 表示確認(主要ブラウザ・実機)
- 修正対応(回数を決めておく)
- 納品作業(アップロード・動作確認)
見落としやすい項目
- 画像の書き出し・リサイズ — 誰がやるかを必ず確認
- フォームの設置と動作確認
- 公開後の初期不具合対応
- やり取りそのものの時間(メール・打ち合わせ)
最後の項目が特に効きます。コードを書く時間だけで見積もると、実際には2〜3割多く時間を使っていることになります。
見積書に必ず書く4項目
金額よりも、この4つを明記するほうが後々の揉めごとを防ぎます。
1. 修正回数の上限
最重要です。「修正2回まで、それ以降は別途お見積り」と書くだけで、時給の下落を防げます。
回数を決めていない案件は、デザインの好みの問題で何度も往復し、気づくと時給が半分になっています。
2. 作業範囲(含まないもの)
「含むもの」より「含まないもの」を書くほうが効きます。
- デザイン制作は含みません
- 原稿・画像素材のご支給をお願いします
- サーバー・ドメインの契約手続きは含みません
3. 前提条件
「デザインデータはFigmaで支給」「対応ブラウザは最新版のみ」といった前提です。前提が変われば金額も変わる、と示しておくことが目的です。
4. 納期と、素材の支給期限
納期だけ書くと、素材の到着が遅れたときに自分の責任にされます。「素材のご支給から◯営業日」と書いてください。
ページ単価で受けるときの注意
「トップページ◯円、下層ページ◯円」という出し方も一般的です。ただし条件があります。
ページ数ではなく要素量で変わる
同じ「下層ページ1枚」でも、テキストだけのページと、料金表・フォーム・アニメーションが入ったページでは工数がまったく違います。
ページ単価を出すなら、想定する要素量を書き添えてください。「一般的な下層ページ(テキスト・画像中心)」といった一言があるだけで違います。
レスポンシブ対応は含むのか
ここを曖昧にしたまま進む案件が本当に多いです。含むなら含むと書く。スマホ表示の調整は、実際には無視できない工数になります。
時給換算で必ず確認する
ページ単価が魅力的に見えても、「1ページに何時間かかるか」で割り戻すと実態が見えます。修正無制限だと、時給は一気に下がります。
実際の見積もり例(LP1本の場合)
数字を入れて考えたほうが分かりやすいので、簡単な例を出します。時給3,400円で計算します。
| 作業 | 想定時間 | 金額 |
|---|---|---|
| デザイン確認・質問出し | 1時間 | 3,400円 |
| コーディング(PC) | 6時間 | 20,400円 |
| スマホ対応 | 3時間 | 10,200円 |
| 表示確認・実機チェック | 2時間 | 6,800円 |
| 修正対応(2回分) | 2時間 | 6,800円 |
| 納品・動作確認 | 1時間 | 3,400円 |
| 合計 | 15時間 | 51,000円 |
この形にすると、値引きを求められたときに「どこを削るか」の話ができます。金額だけを提示していると、削る場所が見えないので値引きに応じるしかなくなります。
不確実性の分をどう足すか
初めての取引先や、デザインが固まっていない案件では1〜2割を上乗せしておきます。「バッファ」として明示する必要はありません。想定時間に含めて出せば十分です。
逆に、何度も取引していて進め方が分かっている相手なら、上乗せは不要です。読めなさの分だけ足すという考え方です。
安く見せたいときは範囲を減らす
「予算が5万円まで」と言われたら、修正回数を1回にする、スマホ対応を別途にする、といった調整をします。同じ作業量で金額だけ下げるのは、自分の時給を下げているだけです。
金額を伝えるときの言い方
幅で出さない
「10万〜20万円くらいです」と言うと、相手は必ず10万円で考えます。条件を固定して1つの金額を出すほうが、結果的に高くなります。
安くしたいと言われたら、範囲を削る
値引きを求められたとき、金額だけ下げるのは最悪の対応です。「この範囲を外せばこの金額になります」と、必ず作業範囲とセットで調整してください。
一度下げた単価は戻しにくく、そこが次回の基準になります。
相手の予算を先に聞く
これは失礼にはあたりません。「ご予算の目安はありますか」と聞いてから、その範囲で何ができるかを提示するほうが、話が早く進みます。
工数の見積もりが外れる原因
「思ったより時間がかかった」が続く人は、たいてい同じところで外しています。
1. 自分の速い日を基準にしている
調子がいい日の作業速度で見積もると、必ず足りなくなります。平均の日を基準にしてください。実際にかかった時間を記録しておくと、この精度が上がります。
2. 確認・待ち時間を数えていない
質問を投げて返事を待つ時間、確認してもらう時間。これらは自分の作業時間ではありませんが、納期には確実に影響します。納期の設定に必ず織り込んでください。
3. 初めて使う技術を軽く見ている
「たぶんできる」で見積もると、調べる時間が丸ごと抜けます。初めて触るものは、実装時間と同じだけ調査時間を積むくらいでちょうどいいです。
4. 詰まった時間を測っていない
分からない箇所で何時間も止まっていることに、本人が気づいていないケースです。30分詰まったら調べ方を変えるか聞くと決めておくと、見積もりのブレも小さくなります。
記録が、次の見積もりを正確にする
いちばん確実な改善方法は、実際にかかった時間を残すことです。特別なツールは要りません。
- 案件名
- 見積もった時間
- 実際にかかった時間
- ズレた理由(ひとことでいい)
これを3〜4件分ためると、自分がどこで外すかの傾向が見えます。感覚ではなく記録で修正するほうが早いです。
私自身、時給714円の条件で働いていたころは、この記録をまったく取っていませんでした。数字にしていなかったから、安いことにも気づけなかったのだと思います。
直接取引の見積もりが不安なうちは
正直に書くと、見積もりの精度は場数でしか上がりません。最初のうちは、基準になる数字を外から持ってくるのが安全です。
エージェント経由の案件は月額で提示されるため、自分の時給の基準を作るのに使えます。私は7社に登録しましたが、門前払いはゼロで、聞かれたのは経歴・得意分野・週何日働けるかの3点だけでした。技術テストもありません。
今すぐ案件を変える気がなくても、Midworksのような会社で提示額を聞くだけで、見積もりの基準になる数字が手に入ります。登録も相談も無料です。比較はフリーランスコーダーにおすすめのエージェントにまとめました。
見積もりが通ったあとに揉めるかどうかは、契約書側で決まります。確認すべき箇所は業務委託契約書で確認すべき7項目に絞って書きました。
見積もりで揉めやすい3つの場面
1. 「ちょっとした修正」が積み重なる
1つひとつは5分で終わる修正でも、10回来れば作業時間として無視できません。しかもやり取りの時間のほうが作業時間より長くなることがよくあります。
対策は、修正をまとめてもらうことです。「お手数ですが、修正点をまとめてご連絡いただけますか」と最初に伝えておくだけで変わります。
2. デザインが後から変わる
着手後にデザインが差し替わるケースです。これは追加見積もりを出す場面です。「デザイン変更に伴い、◯時間の追加作業が発生します」と、作業前に伝えてください。
黙って対応すると、次回も同じことが起きます。
3. 素材が揃わないまま納期だけ来る
原稿や画像の支給が遅れているのに、納期は動かないというパターンです。だから見積書に「素材のご支給から◯営業日」と書いておく必要があります。
私が見てきた現場でも、トラブルの原因は技術的な問題よりこの種の前提のズレのほうが圧倒的に多かったです。
よくある質問
Q. 相場が分からず、高すぎないか不安です
高すぎて断られるより、安すぎて時給が下がるほうが損失は大きいです。断られたら次で調整すればいいだけなので、最初は自分の時給から素直に計算してください。
Q. 消費税やインボイスはどうすればいいですか
制度の適用は個々の状況で変わるため、税務署や税理士に確認してください。見積書に税抜・税込のどちらかを明記しておくことだけは、必ず徹底したほうがいいです。
Q. 見積もりを出したあと、作業が増えたら
追加見積もりを出します。黙って対応すると、その範囲が「無料でやってくれる範囲」になります。金額が発生することを、作業前に一言伝えてください。
Q. 知人からの依頼はどうしますか
金額は最初に決めてください。知り合いだからと安く受けると、そこが自分の基準になります。断りにくい相手ほど、条件を明確にしておくべきです。
Q. エージェント経由なら見積もりは不要ですか
不要な場合が多いです。月額で提示され、稼働時間で管理されるためです。だからこそ、見積もりに慣れないうちの土台として使いやすいという面もあります。
Q. 修正回数を決めると嫌がられませんか
むしろ逆です。発注する側も、どこまで頼めるかが分からないと不安だからです。「2回まで、それ以降は別途」と明示されているほうが、相手も予算を組みやすくなります。
Q. 見積書のフォーマットは決まっていますか
決まりはありません。表計算ソフトでも構いません。大事なのは体裁より、修正回数・作業範囲・前提条件・納期の4項目が書かれていることです。
まとめ
- 見積もりは金額ではなく時間から逆算する
- 先に自分の時給の基準を決める
- 見積書には修正回数・含まないもの・前提条件・素材の支給期限を書く
- ページ単価で出すなら想定する要素量を添える
- 値引きを求められたら、金額ではなく範囲を調整する
見積もりが怖いのは、基準になる数字を持っていないからです。まず自分の時給を数字にするところから始めてください。
案件の取り方全体はコーダーの案件の取り方、単価そのものを上げる方法はコーダーの単価の上げ方にまとめています。

